ビギニングアイドル/終わる世界で始まる偶像

3連休に3セッションを突っ込みました。着実に卓廃への道を転がり堕ちていますが、周りの人も似たようなものなので大丈夫大丈夫。よっぴーです。
土曜日はすださんPのビギニングアイドル「終わる世界で始まる偶像」に参加してきました。それで感想twなんですが、調子に乗って書き連ねていたらとんでもない分量になってしまったので、今回は冒頭だけtwして本編はふせったーに流すことにしました。ああ、でもネタバレはないので安心してください。ちょっと面倒ですが少し凝ってみたのでぜひお読みいただきたく。ちなみに、同卓PLは青山采人さん、イサコさん、アヤメさんです。どれが誰だか当ててみてね。
 
調査記録0115-0352-57号。以下は、先日発掘された、遺棄された避難用ドーム型シェルターで発見された古い小型携帯端末に残された、あるヒューマノイドの活動記録の一部である。記録は端末内に暗号化済みデータとして収納されていたが、記録媒体の欠損が著しく、その一部しか復号できなかった。当該データを外部に複製した形跡はなく、入手できた情報はこれが全てである。
 
『はじめまして。わたしの名前はKNX-17カナコ、ヒューマノイドです。わたしの対人反応制御機構は擬似人格統合基盤「まじめ」、感情演算パッケージ「たのしさ」および「バーニング」を用いて構築されています。また運動制御モジュールには肢体バランス制御用の拡張パッケージ「えびぞりジャンプ」が追加されています。論理判断サブシステム及び語彙データベースはメモリ占有量の少ない通称「ばか」バージョンを搭載しています』
『本日、わたしを起動した“プロデューサー”と名乗る女性は、世界が滅びに瀕しており生物の生存に耐えない環境であること、ここが避難用のドーム型シェルターであること、半径およそ100km以内に生き残った人類は彼女一人だけであること、その命脈もあと数週間で尽きることを教えてくださいました。そして彼女は、私達4体のヒューマノイドに、その数週間を楽しく、のんびり、みなで仲良く過ごすよう命じられ…』
『わたしの記憶モジュールには多くのデータ欠損があるようです。世界の現状や現在に至る経緯についての情報にはアクセスできません。また広域ネットワーク接続機能にも障害があり、上位サーバへの情報検索リクエストに反応がありません。世界はなぜこの様になってしまったのでしょう。そして、プロデューサーの治療できない病気とは一体なんなのでしょうか…』
『わたしと同時に起動されたヒューマノイドの一体、FINE(フィネ)は、腰部関節機構に緩みがあるらしく、初回起動時に仰臥姿勢から長座姿勢への移行が正常に実行できず、そのまま前屈姿に移行していました。骨格および関節系のメンテナンスが…』
『今日は、わたしと同時に起動されたヒューマノイド「ネア」と2体で「食料庫」の整理をおこないました。そこで発見した「レシピ」とタグ付けされたデータの解読を試みましたが、ネアと私の論理判断サブシステムでは適切な読解は困難でした。「卵」および「小麦粉」というオブジェクトについてローカル検索を実施した結果、「卵」は「孵化」という過程を経て生物を生産し、「小麦粉」は植物の加工品で生物を生育する材料であることが判明しました。わたしたちは「卵」を「孵化」すべく、高温水による煮沸を開始しました…』
『プロデューサーはネアとわたしに、卵と小麦粉からなる焼き菓子「クッキー」の製法を教えてくださいました。できあがったクッキーと、乾燥した茶葉を高温水に浸し濾過した「お茶」を摂取しながら、ノイとFINEを加えた5名で93分12秒の会話をおこないました。会話の後、感情演算パッケージ「たのしさ」の、感覚刺激への反応係数に僅かな変化が見られました』
『ノイはネアの同型機です。またFINEは機体サイズがわたしとほぼ同じの別系統モデルです。ノイとFINEは、先程まで衣料品の洗浄および収納作業に従事していました。その際、プロデューサーの体型および性別に合致しない大量の衣類を発見したノイは、廃棄を提案しましたが、プロデューサーによって却下されたそうです。その後FINEはそれらの衣類を再構成、あるいは組み合わせることによる利用法を提案し、プロデューサーの好評を得たとのことです。両機はプロデューサーとの会話を通じて「思い出」「嬉しい」という概念を学習し…』
『プロデューサーは運動がお嫌いです。また、夜中に空腹を覚えることが多いようです。昨夜もわたしたちの就寝後に、台所にて「お好み焼き」を食べておいででした。不審な移動音とかすかな照明の変化によってこれを感知したわたしたちは、台所に集合し「お好みパーティー」を開催しました。「お好み焼き」製造のプロセスには不明点が多く、加工や加熱の手順にいくつかの疑問点がありましたが、パーティーはたのしく執り行われました』
『パーティーの際プロデューサーは、体重増加および水平方向への体型変化を危惧しておいででしたので、翌日地下のジムでRFAと呼ばれるエクササイズツールによる運動を提案し、ご一緒しました。プロデューサーはだいぶお疲れの様子でしたが…』
『最近、わたしたちの感情演算パッケージは、外部からの感覚刺激に対して、以前とは異なる出力を示すようになりました。出力はあるときは偏り、またあるときは大きく揺らぎ、既存の出力想定曲線へのフィッティングが困難で、自己診断機能へのフィードバックが阻害されることがあります。感情演算パッケージのエラー、あるいは感覚入力系ハードウェアの障害の可能性も考慮に入れる必要が…』
『今日、プロデューサーから事の真相をすべてお話いただきました。なんということでしょう。まさか世界に、そして人類にそんな事態が襲いかかっていたとは』
『みちさの決意は固く、決定を覆すことはもはやできません。「きちんと仕事を済ませてくるから待っていてほしい。ここに帰ってきたい。でも絶対とは言えない」そうおっしゃいます。ネアとノイ、FINEの3人はみちさの意を汲んで、ドームに残る選択をしました。3人の判断は正しく、その気持ちは尊重すべきです。ですが、わたしはみちさに同行するにしました。役には立たないかもしれない、足手まといになるかもしれません。それでも、わたしはみちさの「絶対」になるために、お供する決心をしました。そして3人の待つ我が家に、みちさとともに必ず還るのです。最後の一週間を、わたしたちはみちさと楽しく、のんびり、そしてみなで仲良く過ごすと決めました』
 
「ああ、わかります。永い後日談のビギニングアイドルね」と思ったそこの御仁。そうじゃないのじゃよ。Pの一挙手一投足、初心者へのルール説明の言葉選び、状況描写。全てに巧妙な仕掛けが仕組まれており、そして、嘘は一切ない。実はこの世(記録はここで途切れている)